偽随筆 ・ ゲレクシス


























ヒステリックブルー / 春〜spring〜】




懐かしいです。
でも、画像というか動画というか、こういうのはよくあるけど、いただけませんね・・・ ( ̄、 ̄*) 歌詞まんま動画。作った方には創造力というものがないの?とセンスを疑ってしまいます。
ちょっと前にいい感じのがありましたが、消されていました。
























改めましてこんにちは、ソフィアなのです。
久しぶりのマンガレビューです。
古谷実さんの「ゲレクシス」。
2巻で完結して、「打ち切り?」とか「序章のうちに終わってしまった」とか「もっと読みたかった」なんて声が多いようですが、わたしは計算された尺だと思います。
人気しているから、描けばお金になるからとダラダラ続くのはもうたくさんですよ。そんなマンガ、多いですよね。それでおもしろいのなら文句もありませんが、大抵は飽きてしまいます (;−"−) 「ワタモテ」ヲミナライナサイ!
シュールで非日常なお話なのに、読みだしたらどんどん引きこまれて、どうなってしまうのかと続きが気になってしまいます。
古谷実さんはまともに読んだのは「僕といっしょ」「グリーンヒル」くらいで、その後はギャグマンガ家の宿命なのかつまらないシリアスものになってしまった気がします。
その2作以前のデビュー作「稲中卓球部」はギャグですが、時代のせいか「ふーん・・・」な感じなんです。ギャグマンガは時代と一致していて、昔の名作が現代でも通用するなんてことは稀だと思います。
天才バカボン」なんてクスッともしません。


そんな古谷実さんが久しぶりにギャグ色が強めでストーリーとしても秀逸なものを描いたと思ったのが「ゲレクシス」です。
2巻完結ですぐに読み切ってしまえますからおススメですよ〜 (〃^∇^)o_彡☆
「なのに、なんだよこれ!ひどいじゃないか!!・・・なんにも言えなかったぞ、友達に・・・」
のところはちょっと泣きました (つД`)・゚・
わたしは彼の一番の名作だと思います。じわじわきますよ。











これ以降、ネタバレになってしまいますから「読んでみようかな?」と思う方がいらしたら見ない方がよいです (^ω^;)








【ゲレクシス】
この世にいてもいなくてもいい比率が完全に完璧に半々になった人間が稀になってしまう状態。
いらない人間がなってしまうのではなく、比率が半々で、なのです。半分はいた方がいい人なのです。


過去の記憶がなく、頭は妖怪のようで身体は人間の二頭身で人の目には見えず、その場を動くこともできずにただずっと立っているだけ。
自分は誰かわからないけど、言葉や世間のことは知っている。
疲れないし、暑くも寒くもなく、お腹もへらない眠くもならない。
なんにもないんです。呼吸すらしていないし、心臓があるかどうかもわからない。死ぬこともできない。
そんな期間が個体にもよりますが、何年も続くんです。「モウソウくん」は23年そんな状態だったし、「正気さん」は8年、主人公の「店長」は3日でした。
つまり、そんな状態にも終わりが来るんです。土の中にいたセミの幼虫から成虫になるように。


ある日突然、頭がもげます。人間の身体は消失し、頭だけになってしまいますが、すぐに身体が生えます。人間らしい身体ではありませんが。もう完全に妖怪のようになってしまうんですね。
すると動き回ることができるようになるんです。
でも、走り回れば疲れるし、お腹もへるように「生物化」します。
そして、この状態になると人の目にも見えるようになるのですが、人間に見られる、たとえずっと遠くからでも「認識」されると数日後に死んでしまう。
それを保護する為か、日本の特定された山奥に飛ばされてしまい、人目を避けて生き延びなければなりません。
でも、いつまで続くのかそこで暮らして「待って」いたらいつかは元の姿に戻れるそうです。
普通に動き回ることができるのなら、あれもしたいこれもしたい、ちゃんとしたものを食べたい(土を食べていても生きてゆけますが)。そんな欲求に負けてリスクをおかして人里に隠れ降りて「見られて」しまい、大抵は死んでしまうんですね。
元に戻ることができたゲレクシスがいたかどうかは明かされていません。
と、ここまでのことは一気にわかるのではなく、読み進めてゆくうちに明かされる感じですね。


「あなたはゲレクシスにならない自信がありますか?」


作者は何を伝えたかったのか?とかは実のところわからないですよね。個人個人で判断するものでしょうし、もしかしたら何も考えなしで描いたかもしれません。
でも、深読みしたくなる作品ではあるんです。
わたしは、ですけど・・・テーマは「友達」なんだって思いました。
主人公の大西さん(40才、バリバリの独身)は、「人には冗談ばかり言うけど、自分には冗談が通じない女」アルバイトの倉内さん(23才)と二人で小さなバウムクーヘン屋をきりもりしながら、倉内さんにいじられてばかりいました。
彼はものを知らないし、「カメムシの背中」とか「カニのお腹みたいな顔」とか言われていたり、「生まれたての宇宙を顔マネして」とかからかわれていますが、バウムクーヘンを焼く腕は一流です。つまり、一芸だけに秀でている中年のオジさん。
彼の誕生日に相談ごとを打ち明ける際「倉内、おれとお前は友達だよな?」「どうかな?友達の定義にもよるぜ?」なんて17才も年下の若い女性に友達確認したりします。
見えないはずのゲレクシスの幼生(?)が見えてしまった大西さん、「お前はオレの妄想だ、そしてオレは脳の病院に行かなければならない」とか会話しながらも、23年もただ立っていたモウソウくんになんとなく友達扱いされ・・・。
「記憶のあるゲレクシス」になってしまった大西さん「店長」、森で出会ったゲレクシスの正気さんに挨拶とか全部飛ばしていきなり「オレと一生の親友にならないか?」と言われます。
やっと出会ったまともに会話できる「純平くん」は翌日死んでしまいました。
そして、人間にモロに目撃されてしまった3人、死が確定してしまいます。一晩泣き明かした翌日、どうせ死ぬのなら何度人間に見られても同じとばかりに、「店長が焼いたバウムクーヘン食いたい」「・・・わかった、お前たちに生涯とびきり最高のバウムクーヘンを食わしてやる」と自分のお店までやってきます。倉内さんとも再会します。
ろくなものを食べていなかったから、その夜は食べたり飲んだりの宴で寝てしまいましたが、「店長」だけは突然元の大西さんに戻りました。そこで「あいつらに最高のバウムクーヘンを焼いてやるって約束したのに!あんまりじゃないか!」と元に戻ったことを喜べないんですね。
一年後、モウソウくんが立っていた場所に何度も行く大西さんに倉内さんは従業員として、そして友達として助言します。倉内さんとは友達として認めてもらえるようになっていた、と。
このように、要所要所で「友達である」という状況が出てくるんですよね。


何度もモウソウくんがいたとされる場所に行く大西さん。
作者は照れ屋さんなのか、普通にいい感じの終わり方をしないのが常で、ドライなラストで作品を終わらせる特徴があります。
わたしは普通に、実はもう大西さんには見えなくなってしまったけど、そこにモウソウくんは立っていると信じ、大西さんは独り言のようにモウソウくんに語りかける毎日。「冗談と変化が苦手な女」倉内さんとは、なしくずしで夫婦になっていて相変わらずからかわれながら二人でお店をきりもりしてゆく日常・・・。そんな終わり方でよかったのになぁ、とか思ってしまいます。
それと、あのラストなら最後のセリフは「ああっ!!」ではなく、「あれ・・・?」の方が全体の流れからすればしっくりきます。読めばなぜかというのは理解できると思います、この違いについて。


純平くんが他のゲレクシスと外観が違って、動物のように毛で覆われていたのは、表情を隠すためマンガ的にそうしたのでしょう。
おっとりさんで涙もろいモウソウくん、タレ目なんですけど、目だけのアップコマが多いです。それはツリ目で怒りに満ちているようにも見えます。そこも作者の計算かもしれません。



こんな感じかな?
ちょっと長くなってしまって、ここまで読んでくれた方はまぁ・・・いないかな?と ( ̄▽ ̄|||)
作品を語りつくそうとしてしまうとこうなってしまうんですよ。