2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

S・O・S

木の幹に「正」という文字が刻みこまれた。 私がこの無人島に漂着して今日で5日目ということになる。 昨夜は孤独からだろうか、家族の夢を見た…。 救助隊が来るのには遅すぎるほどの時が経っているが一向にそんな気配はなく、今朝もよく晴れた空には果てな…

4/23〜5/29の記事について・・・

この期間は製本用に記事を並べてみたものです。 自分の記録として製本にしました。 友達も買ってくれました。 なので、 先にあるお話とだぶってしまっていますが、細かいところの推敲はなされていて、こちらの方がより完成度が高い(と思う)です。 それなら…

***初出一覧***

(死神・2題)・・・・・・・・・・ (2008.08.09) ひまわり・・・・・・・・・・ (2002.06.07) ユーカリの木・・・・・・・・・・ (2002.07.03) 緑の角・・・・・・・・・・ (2004.05.09) 華 燐・・・・・・・・・・ (2007.07.16) にじができるわけ (かえ…

雨の降る日曜日

今日は雨降り 窓から見える街並みを 静かに濡らす黒い路上 今日は雨降り 誰も来ない 部屋にはわたし一人 指の隙間から さらさらと こぼれ落ちた青い思い出は 還ることなく 形もなく透き通る みんなみんな雫になって 街並みに煙り 雨を集めた河の流れは ゆっ…

れきりま 5 (ライバル)

「はははっ!まるで話にならんな!」 キースが高笑いする。 「むむむむむ…。コントローラーを取り替えてもう一度勝負だ!」 リッチャーがキースからゲーム機のコントローラーを奪う。 「ぼくの蹴りが出る前に小技で回避なんてズルイぞ!」 「おいおい。コン…

れきりま 4 (レベッカ・パシフィカスの場合)

*「レベッカ」は原作には登場しないオリジナルキャラクターです。 ―アル学の休日― 緊急招集がかからない限り、この日一日は自由行動とされていた。 「ちっ!今週はバドーの出番はなしかよ!グロリアちゃんも出ちゃいねぇ!」 ガイン教官がマンガ雑誌を棚に…

れきりま 3 (バトルフィールド)

1 村の外壁に沿って歩く。 スタート地点を時計の「12」の位置とすると、キース、メイア組は時計回りに来て「4」の地点あたりで、反時計回りに回ってきたレイ、マナ、ヴェイン組と出会った。「どうだ、そっちは?」 キースが声をかけた。 「ん〜、ちょっ…

れきりま 2 (夜明け前)

*画像はわたしがイメージするところのガイン教官です。 「ガインの担当、かなり今期生は相当にヤるようだね」 グラスをテーブルに二つ置きアイスボックスと並べ、ケニヒがガインに問いかける。 「ん…。すまんな」 ガインはバーボンを棚から1本取り出した。…

れきりま 1 (不死身な男)

レイとキースが談話室入口のドアまで来ると、メイアのヒステリックな声が聞こえてきた。 二人は顔を見合わせ、ドアを開ける。 生徒たちが賑わう中、案の定リッチャーがメイアに絡んでいた。 「しつこーい!勝手に決め付けないでって言ってるでしょ!」 「ふ…

(『REKIRIMA』と『れきりま』)

*「れきりま」は、盟友S木さん作「REKIRIMA」を原作とする二次創作です。 「REKIRIMA」 世界は魔物が暴れ狂い、そしてその脅威に対して抵抗を続ける人々と、魔物を利用して世界を支配下に置こうと企む組織との戦いのお話。 要塞都市「ウッ…

S・O・S

木の幹に「正」という文字が刻みこまれた。 私がこの無人島に漂着して今日で5日目ということになる。 昨夜は孤独からだろうか、家族の夢を見た…。 救助隊が来るのには遅すぎるほどの時が経っているが一向にそんな気配はなく、今朝もよく晴れた空には果てな…

エンジェルダスター

「じゃ、次いくね〜。オリオン座の一等星ペテルギウスの直径は太陽の何倍か〜?」 椅子に縛り付けられた女の頭に銃口が当てられる。 「そ、そんな事…、知るはず」 「あれぇ?わかんないなら引いちゃうけど〜?」 女の身体が硬直すると、目が吊り上がった。 …

ドブネズミ

カントクが死んで2週間くらい経ったろうか? 浮浪者にとって暦など関係はない。幾日前かなど、いちいち数えはしない。その日が暑いか寒いか、晴れか雨か。それだけだ。 強いて言えばファミレスなどの残飯の関係上、曜日には気を使う程度だ。 カントクは何者…

「ドラゴン・ソネット(第4章‐12話)〜最終話〜」

*「いきなり最終回」モノです。これ以前の話はありません。 「そんな…!まさか」 アリアは愕然としている。タクトは油断なく剣を構えた。 闇の中から聞こえる声の主はあまりに意外なものであった。 「魔獣の統括者・・・、首領が魔獣とは限らないわ」 玉座…

悪魔が来たりて

23時59分55秒。 ぼくは合わせ鏡の片方を倒した。 「…バッカみたい」 合わせ鏡が0時に悪魔を召喚するという俗説はよく聞くものだが、一体どれだけの者が実際に試したことだろう。 現実的でなく、もし仮に悪魔がやって来たところで何をされるかわかった…

願い事ひとつだけ

「あー、しんど」 目の前に見たこともないオヤジが現われ、座り込んだかと思ったらその場に寝転がった。 「おい…、おっさん」 「なんや?」 「…何者だよ?」 「ワシかい。妖精っちゅうやっちゃな、お前らの言うところの」 まぁ、確かに身の丈は指ほどの大き…

落日の坂道

平成××年3月28日。左右田(旧姓)文恵が死んだ。 一本の電話によって、私はその事実を知らされた。 北村上小学校、昭和××年同期卒業生。私と文恵の繋がりといえばそれだけにすぎない。 小学校を卒業して以来、30年近くの時が経っていた。 それにもかか…

子供刑事 中原君 3

上田商業高校前交番 「そっかー、やっぱり面白いよねぇー」 「いやぁ、さすが中原さんですね、ぼくのツボをおさえてますよ。えっへへへ」 中原と交番勤務の宮里が談笑を交わし合っている横で安田は大あくびをしていた。 「掘り出し物ですよ、このアニメは」 …

子供刑事 中原君 2

*作中に「よつばと!」(あずまきよひこ著)のセリフを拝借しています。 「えびふりゃーでしょー、手羽先とー、あとひまつぶし」 安田の顔はヒクついていた。 「ひつまぶし、ね…」 このところ聞き込みに回ることが多く、ロクなものを食べていない。 中原は…

子供刑事 中原君 1

中原と安田の二人の刑事が旅館に到着したのはちょうど0時頃であった。 「こちらです。現場に連れ合いの三人も待機しています」 最寄りの交番から先に駆けつけていた警官に案内された。 「あ〜、これはどうもねぇ。…雪はやんでるね」 車から降りると中原は雪…

いっしょに帰ろう

「でさぁ、なんかソイツがしつこいワケ。下心丸出しーって感じで」 由梨絵の話を和美はすでにうわの空で聞いているようだった。 わたしも少し辟易してきたところだ。 下校時に聞かされる由梨絵の話も、最近すっかりパターン化が進んできた。 「まぁ、なんか…

ニコラスは誰?

―12月25日― クリスマスの夜、栞がまた体調を崩した。 知り合ってちょうど一年目の今日、ぼくのアパートで二人だけのささやかなパーティーを開くはずだった。 バイトを早々にきりあげアパートへ帰ると、先に来ていた栞が寝ていた。昼から具合が悪かったら…

黒い煙

ひどく気が進まない葬儀の参列だった。 彩乃の祖父、源一が脳溢血で他界したのは4日前の事だ。 幼い頃から彩乃は祖父が苦手であった。特に睨んでいるわけではないのだが、ギョロっとした目で一瞥されただけで竦みあがってしまったものだ。 成長すると共に彩…

オレンジ色の世界

夕暮れ。 わたしは「100円切符」というものを手にして、電車のホームにいます。 100円で目的の駅まで行けるのだけど、やって来る電車は全て1両編成なのです。 そして様々な1両電車が通ります。 手を上げてタクシーのように拾うのですが、ホームには…

柏木家の人々

「ワリーワリー!遅刻だ、遅刻!」 三男の敏夫がドタドタと転がるようにやって来た。 「親父、何の用事だって?」 齢82歳になる弥三郎が寝かされる布団を囲むように、すでに二男二女の兄弟が集まっていた。これで三男二女の五人兄弟が揃う。 「敏夫、もっ…

ブレイン・コントロール

某国政府機関の命により、この壮大な発明を手掛けてどれくらいになるのだろう。もちろんその内容は極秘事項であり、目的はぼくでさえ知らされてはいない。 研究員はぼく一人。完全隔離された施設管理下で行われている。 『何の為に?』という目的など知らず…

小夜子のこと

わたしは小夜子が嫌いだった。 キレイで成績もよく、お人よしなくらいに面倒見がいい。なんでも父親は会社の重役らしく、育ちが良さそうなところからから察するに裕福な家庭であるようだ。 クラスの同じ班であり表面上は友達だが、わたしは常に小夜子を意識…

クローバー

クローバー野原の向こうに白い灯台が見えるこの場所はあの頃と変わりのない風を運んできていた。 車を走らせる道中の街並みは知らないうちに綺麗なビルが建てられ、この野原も残されているか心配していたが、取り越し苦労であったようだ。 …ぼくの隣に君はも…

野枯まで (かえでシリーズより)

かえでは軽く舌打ちをした。 『次のバスまで1時間半か…』 肩に降り積もった雪をはらい、待合い小屋の戸を開けた。 今どき珍しい薪ストーブにやかんが焚かれ、湿った蒸気に身を包まれる。 ふと傍らを見るとベンチに少女が一人いた。中学生だろうか、セーラー…

ドアが開くまで (かえでシリーズより)

「こんな店、二度と来てやらない!きぃっ!」 中年婦人が金きり声をあげる。 「…どうしたんだろう」 小学生の少女が不安そうにつぶやく。 「…………………」 女子高生は黙ったまま。 とあるデパートのエレベーターに3人が閉じ込められてから10分ほど経っていた…